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2 落選

2 落選

「ん? 何で外がこんなに明るいんだ?」
とゆっくり起き上がり時計を見る。
「やっべー! またやっちゃった!」
慌てて着替えを済ませ、玄関を飛び出し、自転車にまたがる。
朝の渋滞の隙間を縫う様に駆け抜けた。
駅前に自転車を止め、ここから学校までは歩いていく。
というのも、俺の行ってる学校には自転車置き場がないのだ。
しかし今日は悠長に歩いている場合ではない。
「はぁはぁ、この長い上り坂が非常に憎い」
もう少しだ俺、と自分を奮い立たせる。
「ふー、 最高記録だぜ」
自分を少しだけ褒めてみたが、そんなことをしている場合ではない。
もうチャイムは鳴り終わっている。
階段を駆け上がり、教室に入ってみると既に教師が出席をとっていた。
俺の方をみた教師は
「ゆうじ、遅刻か」
「はぁはぁ、すいません」
「またお前か、髪も乱れてるしネクタイも曲がっている。まぁそれだけ必死になったんだろう。 
それに免じて今日は許してやるよ。席につけ」
「はい、すいません」
息を整えながら席に着くと
「お前顔色悪いぞ」
隣の席の小竹が言ってきた。
 小竹は水泳部に所属するクラスメイト。
背は高く顔も整っており、髪の毛もサラサラしている。
こいつが何度か告白される話を本人から聞いている。
まったく羨ましい限りだよ。
俺なんか写真部のモロ文科系。
部員は俺1人だし、カメラ持ってアイドルの追っかけでもやってるんじゃないかと思われている。
見た目は普通なんだぜ? 背は小竹ほど高くないけど、クラスでも……真ん中辺り。
でもさでもさ、俺だって告白位された事あるんだぜ?
小学生の頃だけど。
 ブツブツと独り言を言っていると
「おい、大丈夫か?」
と真剣に小竹が心配している。


 さ、授業も終わった事だし部活行くか。
「お前はいいよな。1人で気楽にやってるんだろ?」
「まあね」
「でも、写真部じゃ女っ気も全くなしだろ?」
「うるせー」
「じゃ、またな」
「おう」
 
 部室のカギを開け、テーブルに置かれているコーヒーメーカーを手際よく操りコーヒーを入れる。
パイプ椅子に座ると自然に溜息が出た。
「ふー、今回もまた入賞しなかったか」
わかっていたんだそんな事。
自分でもいけない所がわかる。
でも締め切りに追われて……
「言い訳だよな」
先日フォトコンテストに応募した、海と空だけを切り取った景色を見ながらそう呟いた。

「やっぱり先輩は凄い人だったんだな……」
部室に飾られている雪山の写真を見ながら、背もたれに大きくのけぞった。
いつか俺も先輩の様な、こんな写真を撮ってみたいな。
「さて、写真の整理整理」
机に積まれているいる写真の整理をはじめた。
しかし、落選した写真が頭にちらつく。
「あー! 気になって仕方ない! もういいこんな写真」
そう言うと、その写真を紙飛行機にして窓の外に飛ばした。
外で「痛っ」という声が聞こえ、窓の外を見た。
「ありゃ、女子に当たってしまったか。まあ危ないものでもないし大丈夫だろう」
机に戻ろうとしたとき、
「うわー素敵」
と、かすかに声が聞こえた。
振り返ると、今飛ばした飛行機を広げて笑顔を作っている。
俺の写真が……素敵?
あの写真が?
俺は、半年前に同じく入賞しなかった山と空の写真を再び紙飛行機にして飛ばしてみた。
「あはは、追いかけてる追いかけてる」
無邪気にその飛行機を追う女子がなんだかかわいく見えた。
やっぱり笑顔だ。
そんなにいいものなのかな?
俺にとってはもうどうでもいい写真なのに。
「ま、いっか。さて整理整理」
机に向かい写真の整理を再開した。
しばらくすると、階段を上がってくる足音がする。
「すいませーん。誰かいますか?」
「はい?」
ゆっくりドアが開いた先を見ると、紙飛行機少女が訪ねてきた。
「うわっ、やっべー来ちゃったよ。文句でも言われるのかな?」
心の中で次の対処を考えていた。
「あの、これあなたのでしょ?」
緊張しているのか、声が少し震えていた。
「あぁ、それ? 欲しかったらあげるよ」
ま、そんな写真ない方がスッキリするし、追いかけていたかわいらしい姿に免じてその写真はあげよう。
上から目線でそう思った。
これで大人しく帰ってくれるだろうと思っていたら、
「あの、入ってもいいですか?」
「は?」 
と意外な紙飛行機少女の発言で声にならない声を上げた。
なんだこの子は?
といっても、俺と同じ模様の色のネクタイしてるから同級生だって事はわかる。
でも、写真部に女子?
ヲタクのイメージがある写真部に?
少し困惑したが
「ん? いいけど面白いところじゃないよ」
と愛想なく言ってみた。
俺は1人の時間が好きなんだ。
こんな所に女子が入り込むなんて想定外だ。
男子クラスの俺は、女子ともそんなに話した事ないし、どうすればいいんだ俺?
俺どうすれば……
「……あれ? 俺、動揺してるのか?」
もう1人の自分が心の中でささやいた。
気を紛らわす為に、写真の整理を再開する。
意外な展開に、紙飛行機少女と何を話したかよく覚えていない。
聞かれた事を適当に答えていた気がする。
そして、彼女は帰り際に顔だけ覗かせ
「あの、あなたはいつもここにいるの?」
と聞いてきた。
俺の写真に少しでも興味を持ってくれた人。
そんな人に素っ気無い態度で接してしまった事に反省し始めた俺は
「あぁ、授業と休みの日以外は大体ここにいるよ」
と優しく答えたら、自然に笑顔になってしまった。
「あ、ぁ、失礼します」
紙飛行機少女は、少し顔を赤らめて部室を後にした。

彼女が出て行った時の体勢のまま考えた。
なんだったんだあの女子は?
いつもここにいるのかと聞いてきたという事は、また来るつもりなのか?
「参ったなぁ」
とは言ってみたが、顔の筋肉が自然に緩んでしまっている俺がいた。


つづく
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空色写真

1 紙飛行機

「いってきまーす」

そう言いながらつま先をトントンと鳴らし、少しよろめきながら玄関を飛び出す。
交差点で見知らぬ男子生徒とぶつかり、それが転校生で恋に落ちる。
「何を考えているんだか私・・・」
と1人でクスクス笑っている。
 坂を上ってこの高校に通うようになってから2度目の春を迎えた。
「どうしてこの学校はこんな山の上に建てたんだろう。というよりどうして私はこの学校を選んでしまったのだろう」
と最初のうちは思っていたけど、いつしかこの坂の辛さにも慣れていた。
「おはよー沙希」
そう明るく挨拶してきたのは一番仲の良いクラスメイトの彩子。
ハキハキしていて元気がある。運動は苦手だけど並外れた芸術センスは羨ましい。
スラッとしていて、かすかに青みがかった肩位までの髪。
男子はきっとこういう女の子が好きなんだろうなーとちょっと嫉妬したりする。
私?私はというと、勉強も特にできるわけでもないし特別かわいいわけでもない。
髪は真っ黒で長さは彩子と一緒位。運動は苦手でいつも見ているだけ。
声はよく「アニメ声だね」なんて言われるけど
最近ではそれがちょっと嬉しかったりする。
悩み?特にないよ。特別好きな人もいないしね。
でも強いて言えばトロイところかな。
あだ名が「トロ子」と名づけられた時代もあった。
のんびり屋で空ばっかり見てる。
それは高校生になっても変わらなかったよ。
と、知り合ったばかりの男子に紹介している自分を妄想するのも、トロ子と名づけられた理由だなと少し反省した。
「ねぇ、ねぇってばー」
彩子が沙希に話しかける。
「沙希ったらまた自分の世界に行ってるの?」
と少し口を尖らせて言った。
「あ、ごめんごめん。何?」
「もう沙希ったら、今日どうするの?」
「え?何が?」
「忘れちゃったの?放課後クラスの男子とカラオケ行く予定だったでしょ」
「あぁ、あれね、ごめん。今日はやめておく」
「やっぱりダメなの?」
私は正直言うと男子が苦手だった。
男子が全部苦手というわけではないけれど、なんだか明るい色っていうか軽いっていうか。
とにかく周りにいる男子は賑やかすぎて。そういうノリが苦手なのよね。


「はぁ~やっと今日の授業も終わった。」
と溜息をつくと彩子が
「じゃあ沙希、また明日ね」
「うん、また明日」
軽く手を振ると彩子は男子生徒に紛れて帰っていった。
さて、どうしよう。
とりあえず何か飲みたいな。
自動販売機のある購買までは中庭を横切って行かなくてはならない。
「雨が降ってなくてよかった。」
校舎の間に見える空を眺めながら呟いた。
その時、沙希の頭に何かが当たる感触があった。
「痛っ」
と言ってもそれほど痛いわけではなく、突然の頭部の刺激に驚き、声を出してしまった。
「なにこれ?」
A4ほどの大きさの、雑に折られた飛行機の先端が沙希の頭に当たってゆっくり舞いながら地面に落ちた。
沙希はその飛行機を拾い上げた。
少し厚手の紙を広げると、それは広い海と空だけが写る写真だった。
「うわー素敵」
でもどこから飛んできたんだろうと、上をキョロキョロ見回してみる。
「おかしいなー誰かが私を狙ったの?」
と少々困惑した。
気付くともう1枚の飛行機が沙希の少し前を横切る。
追いかけて、今度は地面に落ちる前に掴んだ。
広げると、今度は山と空が写っている写真。
人工物が写っておらず、切り取られた景色の大半は真っ青な空だった。
「いいなぁーこういうの」
と先ほどの困惑した気持ちはすっかり消えて、そこに切り取られた景色を見ながら1人ニヤついた。
もう一度校舎を見上げると同時に、校舎脇の部室棟の2階窓から人がスッと引っ込むのが一瞬目に入った。
どうしようかと思ったけど、その部室に足を向けてみた。
プレハブ小屋の扉の前には写真部と札が掛けられている。
「へぇ、うちの学校に写真部なんてあったんだ。すいませーん。誰かいますか?」
恐る恐る扉を開けると、1人の男子生徒がパイプ椅子に座って何かをしている。
「はい?」
少し体格が良い男子は沙希と同じ学年という証の青色の模様の入ったネクタイをしている。
見慣れない顔が沙希の方に向く。
「あの、これあなたのでしょ?」
知らない男子生徒に声を掛けるのはちょっと怖かった。
「あぁ、それ?欲しかったらあげるよ」
ちょっとぶっきらぼうに答える男子生徒。
なんて言葉を発していいかわからなかったが、とりあえず
「あの、入ってもいいですか?」
「ん?いいけど面白いところじゃないよ」
お世辞にも愛想が良いとは言えないが、とりえず害はなさそう。
そう感じた沙希は、初めて写真部の部室に入った。
「あなた1人なの?」
「うん。2つ上に先輩がいたけどもう卒業しちゃったから今は俺1人」
今度は机に向かいながら何かをしているので、沙希に目線を合わせない。
キョロキョロと沙希の視線は部室の中を見回している。
6畳程の広さの部屋には、見た事もない道具や一眼レフのカメラが数台あるだけで閑散としている。
真ん中には長テーブルがあり、その上にはマグカップとコーヒーメーカーが置かれているのが印象的だった。
「あの、この写真、あなたが撮ったんですか?」
「そうだよ、でも全然ダメでさ」
「そうなんだ、そういうものなんだ・・・」
と首をかしげ、広げた写真を見ながら言った。
「あっ、お邪魔ですよね?すいませんでした。失礼します」
とぺこりと頭を下げたがその男子は振り返らず
「ん?あぁ」
とだけ言った。
部室から出た沙希はもう一度扉越しに顔だけを出し
「あの、あなたはいつもここにいるの?」
と言ってみた。
「あぁ、授業と休みの日以外は大体ここにいるよ」
と手を止め沙希の方を見て少しだけ微笑んだ。
「あ、ぁ、失礼します」

長い下り坂、沙希は部室でのことを考えながら歩いていた。
「そういえば、あの人誰?名前聞いておくべきだったかな」
と自分の周りにいる生徒とは一風変わった男子に興味を持ち始めていた。
家に帰ると、折目のついた写真を広げ、手で何度も何度もシワを伸ばして
机に強いてある透明のクッションに挟んだ。

つづく



最後の童貞 12 最終話

最後の童貞 12

「なんだ、なんなんだよこの光は!」
拓海はエージェントに構いもせずにうろたえていた。
小部屋になだれ込んできたエージェントもあまりの異様さに拓海を目の前で踏みとどまった。
「な、なんとかしてくれ!」
拓海はそう叫びながらエージェントに近寄っていく。
しかしエージェントは一歩ずつさがり、小部屋から外に出て隊長の後ろにまわった。
「た、隊長、あ、あれは?」
女子大生が拓海から視線を外さずに隣にいた隊長の婦警に聞いた。
「わ、わからん。しかし…」
「しかし?」
「これが、最後の童貞の姿か…」
「ラストバージニティ、ってやつですね」
小部屋から出てくる拓海。
駅構内にいた全員が拓海から視線を外せずにいる。
「だ、だれかなんとかしてくれ!」
そう言うと同時に拓海の身体がフラッシュの様に一瞬強く白い光を放った。
そしてその光と同時に静まり返る駅構内。
そこにいる全員が何が起こったか解らず、身動き一つできなかった。
その静寂にそっと水を落と様な声。
「ふっふっふ」
トンネルの暗闇から聞こえるその笑い声に隊長は恐る恐る声をかけた。
「だ、だれだ?」
ゆっくりと進んでくる足音と声。
「童貞、それは君が見た光。僕が見た希望。童貞、それは触れ合いの心。幸せの青い雲。童貞」
「青雲だよそれは! ってこんな状態で突っ込んでしまったじゃないか毅!」
「なんだ拓海、意外と余裕だな」
「毅! なんとかしてくれ!」
「拓海、無事に30歳になったな。おめでとう!」
「すると、これがその魔法使いってやつか! いつまでもこのままなのか!」
「いや、そんなことはないぞ。 拓海、熊野って人覚えてるか?」
「あぁ」
「あの人がさっき来て教えてくれたんだ。あの人も30歳過ぎて童貞だったろ?」
「あぁ」
「その光は間違いなく30年間童貞だった証だ。まぁそれはすぐに消えるそうだ。問題はここからなんだ」
「どういう事だ?」
「エージェントの皆さん、気をつけてくださいね」
「毅とやら、何が起こるのだ?」
「あんたがここの隊長さんかい?」
「あぁそうだ」
「みんなを避難させたほうがいいぞ」
「どういうことだ?」
「あの光が消えるとな、」
と言いかけたところで拓海の身体から発せられていた光が消えた。
「あぁ消えたか。あのオッサンの言ってた通りだ」
「毅、何が起こるんだ! 教えてくれ!」
「なに、すぐにわかるさ」
と言ったところでエージェント達が悲鳴を上げた。
「なんだ!、どうなってるんだ毅」
「あぁ、男の俺らにはわからないけどな、お前から強烈な臭いが出ているんだ」
「な、なに!」
「女にしかわからないらしいが、それが本当の童貞臭というやつだそうだ。残念だが拓海、魔法使いというより女を自分に寄せ付けないための一種の呪いみたいなものだ」
「そ、そうなのか! だとすると俺は一生このまま、女が寄り付かない身体になるということなのか!」
「いや、お前が童貞を捨てればその臭いは消えるそうだ」
「し、しかし女が寄り付かないなら童貞を捨てるのは…」
「そう、その通り。だから一種の呪いみたいなものなんだよ」
「そうだったのか…」
「さぁエージェントの皆さん、いままで彼をターゲットにしてきましたが彼は30歳になりました。対象童貞ではなくなりましたがそれでも彼の童貞を奪いたいという人はいますか?」
エージェント達は顔を押さえながらトンネルに向かい走っていった。
「な、こんなもんだよ」
「そ、そんな…」
「おい、お前」
「なんだい隊長さん」
「最後の童貞は童貞のまま30歳を迎えた。つまり我々のミッションは終了したわけだ」
「あぁそうだな。で?」
「彼にはかわいそうだが、我々は個人的に彼と関係を持とうとする者はいない」
「まぁあの臭いだしな」
「そういう関係と言うものは時間をかけて築きあげていくものだ」
「散々童貞を奪っておきながらよくいうよ」
「まぁそう言うな。あくまで個人的な見解だ。悪いが我々は撤収する」
エージェントの隊長は毅にそう言うと背中を見せた。
「撤収!」
その号令で残っていたエージェント達も足早に駅を後にした。
残された元童貞達と毅と拓海。
「なぁ拓海」
「なにも、何も言わないでくれ。こんな事なら早いところ童貞を捨てておけばよかった」
「拓海…」
「くそっ、どこまでもついてねーな俺」
「拓海…」
駅構内に残った全員が拓海を見つめていた。
拓海は小さく震え、拳を握り下をむいたままになった。
その姿に、誰も声をかけようとしなかった。
「ちょっとまって! 私がいるじゃない!」
「だれだ?」
毅は声のする方に振り返った。
声を発せずにいた拓海も声のするほうを見た。
「礼奈!」
「あんたはたしか拓海の幼馴染の。俺らには感じないが、あんたはこの臭い平気なのか?」
「特に何も感じないわ」
「それってどういう?」
毅が不思議そうに礼奈に聞いた。
「わからないわ。でもあなたが言っている臭いなんて感じないわよ」
「そうか!」
拓海は思い出したように言った。
「どういうことだ拓海」
「あ、いや…」
拓海は礼奈に近づき小声で話した。
「礼奈もキレイな身体のままだったな。バージニティってやつ」
「そ、そうだけど普通女の子にそんなにストレートに言わないよ? ま、拓海くんらしいけどね」
「礼奈、いや、しかし…」
「拓海くん、約束したでしょ? 30歳になって私と会える状態だったら絶対に会いにきてって」
「あぁ、したな…」
「ねぇ拓海くん、拓海くんはエージェントが狙う童貞ではないわ。でも私にとっては大切な童貞。それでね、私ね、…えっと、拓海くん、その…」
「…」
2人の間に静かであたたかい時間が流れた。
その様子を見ていた毅は、残っている元童貞達にここを出る様に合図を出した。
拓海達をうらやましそうに見ている元童貞達。
「おい童貞! ここでチャンスを逃したら一生後悔するぞ!」
「うるせー 奪われた童貞」
「お、言うね~」
「しっかりやれよリア充!」
「拓海さん!」
そう言って親指を突き出す大里と弘明。
「ありがとう」
「拓海、外で待ってるぞ!」
「あ、あぁ」
そして駅構内には拓海と礼奈の2人だけになった。
「礼奈、でも、いいのか?」
「うん、ずっとこうしたかった」
そのまま2人は重なる時間を過ごした。



地上に出てくる拓海と礼奈。
その2人に駆け寄り拓海のわき腹を小突いく毅。
「うまくやったな」
「あ? どういう意味だ?」
「べ~つに~」
と言い、隣にいた女子高生の肩を抱く。
「この子がお前の最初の…」
「あぁそうだ。いいだろ~ 現役のJKだぞ?」
「なぁそこの女子高生さん、コイツには気をつけたほうがいいですよ」
「そうなんですか?」
「こいつね、メイド姿のエージェントに迫って情熱を持て余すぜとか叫んでスカートめくったりお尻触ってたりしてましたよ」
「え? 本当ですか!」
「おいおい、それはないだろ拓海。お前を助けるためにだな」
「ちょっと! どういう事なの!」
「あ、それはね、こいつが」
「あ、礼奈が呼んでるからまた後で」
「おい拓海! ちゃんと説明してやってくれよ」
そう言いながら毅は女子高生に腕を引かれて連れて行かれてしまった。
「若い彼女を持つと大変だな」
「え? なんか言った?」
礼奈が拓海に詰め寄る。
「いやいや、何にも言ってないよ」
「すいませんね、若くなくて」
「いやいや、そういう事じゃなくてだな」
いつの間にか戻ってきた毅が礼奈に向かい耳打ちをする。
「あ、拓海のやつねツインテールの制服を着た中学生に油断して一度エージェントに捕まったんですよ」
「おい毅!」
「うひゃ!」
「ちょっと、中学生って!」
「いやいやまてまてまて」
「おい毅!てめー」
「お互い様じゃー!」
と言って逃げていく毅。
それを追う拓海。
さらにその2人を追う礼奈と女子高生。
エージェントから逃げ回った拓海と毅は、これからもずっと、礼奈と女子高生に追われる身になった。


最後の童貞

終わり
 

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ジャンル : 小説・文学

最後の童貞 11

最後の童貞 11

「ちきしょう、外はどうなってるんだ!」
拓海は隠れ場所の個室で外の様子を伺おうと扉に耳を当てていた」
「もうすぐ、もうすぐ俺は魔法使いだ。しかしこのままでいいのか俺。仲間を見捨てて俺だけ魔法使いになっていいのか?」
30歳の誕生日まであとわずか、しかし拓海は自分のモラルと戦っていた。
「ちきしょう、童貞達よ、なんとか俺が魔法使いになるまで耐えてくれ! ってそもそも魔法使いになるってどういう事なんだ。すぐに魔法が使えるというのか? しかもどんな魔法なんだ?」
その頃、地下鉄の駅の構内ではすでに戦いは終わっていた。
「よし、これで残る童貞は1人だな。しかしどこに行ってしまったんだ」
「結局あの2人もしゃべりませんでしたしね」
「あぁ、もう少しあの少女っぽいエージェントに尋問させてみよう」
「しかし、あの2人のレジスタンスは完全に昇天してしまっていて口が利けない状態になっています」
「仕方ない。我々で探すとしよう」
隊長の婦警と女子大生は残っているエージェントに駅構内の捜索指示を出した。
童貞の相手をしていたエージェントは、その童貞の横に添う様に横たわっている。
「隊長! この書類の入った棚の後ろから物音がします!」
「なに! よし、そこを徹底的に調べるんだ」
「はい!」
エージェント達は、拓海が隠れている小部屋を塞ぐように設置されていた書類棚を調べ始めた。
「動きそうです!」
「よし、使えるエージェント全員で動かすぞ」
「はい!」
棚はゆっくりと動きはじめ、そして真後ろにあった扉を発見した。
「こんな所に扉が。きっとこの中だ」
「隊長! 噂によると残っている童貞は明日で30歳を向かえるそうです」
「なんだって! あとどれくらい時間があるんだ?」
「はい、約10分です!」
「急げ! 急いでこの扉を開けるんだ!」
隊長はエージェント達に激をとばした。
そして、日付が変わるまで残り5分。
エージェント達がその重い扉を開き始めた。
「な、なんだ! 扉が開くぞ!」
拓海は扉から少し離れその様子を見ていた。
「隊長! もう少しで空きそうです」
「よし、先頭にいる制服のお前、扉が開いたら一気に童貞を奪いにいけ! 周りのものはサポートとして手足を押さえつけるんだ!」
「はい!」
扉がゆっくりと開く。
そして半分開いたところでエージェント達は一気に扉を最後まで開けた。
と同時に先頭にいた制服の女子高生と、他のエージェント達も拓海の手足を押さえようと個室に流れこんだ。
個室の奥にいた拓海はなだれこんで来たエージェント達には目もくれず自分の身体を見ている。
「な、なんだ、この光… どうしたというんだ」
拓海の身体全体が黄色く光り始めた。
「時間は!」
隊長の婦警が女子大生に叫ぶ様に聞く。
「はい、あと1分少々です!」
「よし、怯むな、まだ間に合うぞ! 行け!」
と号令をかける。
個室に入っていくエージェント。
その様子を駅構内で見守る隊長。
身体が光り始めた拓海。
拓海の身体から発せられた光が個室から漏れ、駅構内を明るく照らし始めた。
その光で目を覚ます元童貞達と添う様に寝ていたエージェント。
皆の視点が一斉に個室の入り口に向く。
「こ、この光は一体…」
隊長の婦警が静かにつぶやいた。

つづく

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ジャンル : 小説・文学

最後の童貞 10

最後の童貞 10

地下鉄の旧駅になだれ込んできたエージェント達は、二つある出口を完全に塞ぐように立ちレジスタンスを取り囲んだ。
童貞達は身を隠しその様子を伺っていた。
エージェントの隊列が完成すると一瞬の静寂。
そして、先頭にいた婦警がその静寂を切り裂いた。
その婦警が本物なのかコスプレなのかはわからない。
「あなた達を、童貞大規模騒乱罪でこの場で処理します」
身を隠していた大里は隣にいた弘明に小声で尋ねる。
「おい、童貞大規模騒乱罪ってなんだ?」
「さぁ? 童貞が大規模な騒乱罪を犯してるってことじゃないですか?」
「なんだそれ? そのまんまじゃないか」
そして婦警は続けて言った。
「あなたたちの負けは明白である。大人しく出てくれば悪い様にはしない。プライドを捨てて出てきなさい」
「ちきしょう。学級委員長みたいな話し方しやがって。萌えるじゃねぇか」
「大里さん、ああいいうのが趣味なんですか? 俺はどっちかというと妹タイプが好きなんですよ」
「妹タイプは良いな。妹でドジっ娘なら最高だ」
「いや、それはちょっと違うんですよ。妹はどっちかというとSッ気があった方がいいんです」
「お前とはあまり意見が合いそうにないな」
「まぁそうですね。ってそんな事話している場合じゃないですよ」
「おっと、そうだな」
再び静まり返る地下鉄の駅の構内。
「そうですか、あなたたちの気持はわかりました。では力づくで童貞を奪います」
婦警は右手を上に挙げたとと思うと、駅構内に響き渡る大きな声をだした。
「かかれ!!!」
その号令でエージェントの女達は一斉に駅構内に散らばった。
それと同時に物陰から一斉に飛び出す童貞達、片手にはスプレーを持ち応戦し始める。
「これでもくらえ!!」
「キャー 何よこの臭い!!」
顔を押さえ逃げ出すメイド。
「そんなもの!!」
とスプレーを蹴落とすガンダムヲタのコスプレ女。
「しまった!」
しかし童貞は咄嗟にそのコスプレ女の胸を掴む。
「こ、これが童貞の欲求の威力なのか… あぁ、慣れていくわ…」
また一方ではスクール水着の女が童貞と組み合っている。
「童貞など恥だ! この場で捨ててしまえ!」
「うるさい! お前に童貞の何がわかる!」
また別のところでは
「おい、信二! 大丈夫か!!」
「うわぁぁ~!  あぁぁぁ… ふぅ」
「信二ぃ~!!」
「おい! あいつ見てみろよ! なんだよあの女! 次々に男の上に乗って童貞を奪っていくぞ。くそっ、まるで作業だ」
「あんな童貞喪失嫌だ!」
「まだだ、まだ終わらんよ!」
「くっそ! スプレーがなくなった!」
「アパム! アパム! スプレー! スプレー持って来い! アパーーーム!」
現場は乱れ、混乱し、スプレーの臭いをモロに嗅いだエージェントは逃げ出し、童貞を奪われた男達は横たわり、残ったレジスタンスは弘明と大里だけになった。
弘明と大里は背中合わせに立ち、囲んでくるエージェント達に向けて残り少ないスプレーを構えていた。
「大里さん、ヤバイっすね」
「そうだな弘明」
囲んでいた先ほどの婦警のエージェントが異変に気付く。
「あれ。おかしいわね。もう1人童貞が居るはずなんだけど、数が合わないわね。あなたたち、もう1人の童貞はどこ?」
「知らねぇな、知っていたとしてもお前らに教えるわけねぇだろ」
「そう、なら喋らずにはいられなくさせてあげるわ」
「な、ナニをする気だ?」
するとそのエージェントは振り返り真後ろに居た女子大生に向かい言った。
「あれを」
「はい」
女子大生は一度トンネルに引き返したと思うと、すぐさまもう1人のエージェントを連れて戻ってきた。
婦警は連れられてきた女に向かい
「よし行け!」
と号令をかけた。
女1人はゆっくりと大里に近寄る。
が、近寄る途中で自分の足につまづき転んでしまった。
立ち上げると膝の汚れをはたき「テヘっ」と言った。
「く、くそ、こんなのないぜ!」
「しっかりしてください大里さん! 気を確かに!」
そして近寄ってきた女は大里を見上げ
「おにいちゃん、もう1人はどこ?」
と優しく問いただした。
ツインテールでキャラクターのデザインが入った水色Tシャツを着て、チェックの短いスカートを穿いている女は、やや潤んだ目で何度も何度も呼びかけてくる。
「ねぇねぇおにいちゃんってばー」
「くそ、卑怯だぜこんなの!」
「ねぇねぇ お・に・い・ちゃ・ん♪」
「う、そ、それは…」
「大里さんダメです!」
「よし、もう1人用意しろ」
婦警は再び指令を出し、別の女を弘明に用意させた。
「ねぇおにいちゃん、いつまで黙ってるの? 早く言わないと承知しないよ!」
「うぅぅ… き、貴様ら…」
「隊長、いっその事あの子ら2人に童貞を喪失させてやってはいかがでしょう?」
先ほどの女子大生が婦警に向かいそう提案した。
「あぁそうだな。あれなら簡単に落とせそうだ。よしお前ら2人、そのまま押し倒して童貞を奪ってしまえ!」
「はい!」
「はい!」
そう言って戦意喪失していた大里と弘明を押し倒した。


つづく

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

楓

Author:楓
EOS7Dで夜景、ポートレート、イベント、お祭り、風景、など好みの現場があればそこへ行って撮っております。

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